暫く窓から目を離して、再び眼下を見ると、機は既に九州内陸部を飛行していた。
前方に一瞬飛行場が見えた。内陸の空港だから、鹿児島に違いない。
ああ、遠方に高千穂の峰も見えてきた。もう鹿児島だ。
ああ、この山も霊峰だ。右奥には韓国岳も見える。
眼下は都城だ。
機は一旦桜島上空まで飛び、そこでUターンする。その間、高千穂は遠ざかる。
紀伊半島と四国を分ける海峡は紀伊水道、又、四国と九州を分ける海峡は豊後水道。両方とも海峡ではなく、「水道」という名前が付けられている位だから、ほんの幅の狭いものでで、これこそまさに指呼の間。眼下の宇和海を眺めている内に早くも機は九州上空に達し、別府、高崎山の出っ張り、大分と飛び、その先に由布岳が見える筈だが、遠いのかよく見えない。暫く飛ぶと前方に滑走路が見えてくるが、里の中にあるので、少し時間が早いが鹿児島空港かも知れない。大分、宮崎、両空港は海岸寄りにあるので、この辺りで内陸にある空港は鹿児島しか思い浮かばない。
案の定、機内放送があり、機は間も無く下降を始めるとの事。機は一旦空港を通り過ぎ、桜島を掠めるようにしてUターンし、着陸するのだ。右側座席からは残念ながら桜島は見えないが、高千穂の峰は常時右側に見えている。山は午前の陽光に赤く燃えている。この山は樹木が全くなく、全山火山の赤い岩石が細かく砕けた砂岩でできていて、遠くから見ても赤く見えるが、間近の真下から見ると、本当に真っ赤に燃えているように見える。
天孫降臨の地宮崎のまさに神々が降り立った山として、古来からあがめられている。この山頂には天孫降臨の際にニニギノミコトが立てたとされる青銅製の大きな逆鉾が立っていて、その巨大さに圧倒される。又、坂本竜馬が新婚旅行でこの山に登ったとの碑が建っていて、この地が日本最初の新婚旅行地とされている。先刻、桂浜で竜馬を思い出したが、ここ高千穂で又竜馬と再会できたのだ。
先刻富士山を見てきたが、この山も神々しく、真に神の山だ。ここには開聞岳を登った後、先に屋久島に渡って宮之浦岳に登り、再び鹿児島に引き返して2001年の5月に登頂した。山頂の大きな岩石は地熱で温かくなっていて、今尚この山は活火山であるとの強い印象を受けた。
更にその遠方には九州で一番高い韓国岳が山頂に真白の雪を乗せていたが、この山頂からは天気の良い日は朝鮮半島も見えるとのことで、韓国という名前が付けられている。自分が登った時は、残念ながら湿気が多く、半島を望むことはできなかったが・・。機はこの高千穂の峰に吸い込まれるように、機首を下げ、着陸して行った。
大きな町だ、鹿児島市内か、近郊の町だ。
再び又高千穂が近づいてくる。
朝日に映える高千穂峰。
左の山は新燃岳か。今は煙を上げていないが・・
いよいよ空港も近くなって来て、シラス台地もよく見える。
さあ、いよいよ着陸だ。霧島の山々、お茶畑なども見える。