ちゃおチャオブログ

日々の連続

モラエスの故地を訪ねて(138)帰国。旅の終わりに。

香港国際空港は周りを山に囲まれて、空港の騒音が町中に広がらないようにされている。
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この島には確か香港で一番高い山があったと思ったが・・
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ああ、今飛行機が飛び立っていく。
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市内からも近く、良い空港だ。
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さて、いよいよ離陸だ。
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香港、次に来るのはいつのなるか・・
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空港での割高な買い物は止めて、搭乗開始と共に機内に乗った。後は一路4時間空の旅である。大きな島を切り開いて造成された新空港は周囲を高い山に囲まれていて、ここが香港かと疑いたくなる程の長閑な田園風景だ。が、機が上昇を始めると、直ぐにも眼下に高層ビル群が飛び込んで来る。山一つ隔てた向こう側は香港市街地だ。街と空港がこれだけ高い山で遮蔽されていたら、空港の騒音も街には響かないだろう。いろいろな意味で優れた行政だ。

香港を離れると直ぐにも昼食が運ばれた。昔の駐在員だったら、久し振りに飲む日本のビールに日本の味を感じたであろうが、今はどこにいても似たような味。香港だったら、キリンもアサヒもいつでも飲めるだろう。30年前とは違うのだ。「ビールはキリンとアサヒ、どちらに致しますか?」とスチュワーデスに聞かれても、自分としてはどちらでも構わない。帰国の便で日本のビールを飲んで日本の食事をすれば、もう旅は終わるのだ。

食事を終わって、最後にまたワインをお願いする。ワインを飲みながら今回の旅行を振り返る。明治の中葉、当時マカオの副司令官だったモラエスは、日本からの武器購入の目的で神戸にやってきて、そのまま神戸に領事として居つき、日本人を妻にし、最後は徳島に居所を構え、母国ポルトガルには一度も帰らずして徳島の地で75歳で亡くなった。彼は日本をこよなく愛し、日本の風物を紹介する著作を数多く残した。

当時、同じ時代の外国人で小泉八雲、即ちラフカデオハーンがいたが、彼はハーン程有名ではなく、いやむしろ徳島の人以外、殆どの日本人は彼のことを知らなかったが、今は亡き新田次郎毎日新聞連載の「孤愁・サウダーテ」で彼を紹介し、特異な外国人として当方の記憶に残った。後年息子の藤原正彦が絶筆した父親の後を引き継ぎ、後半を完成させた。

ポルトガル人の憂愁、孤独。二人の日本人妻に先立たれ、身寄りもなく70を過ぎて、徳島の長屋で余生を過ごした。死後年金その他で1億円を超える資産があったという。だが彼はポルトガルへは帰らず、この異国の地徳島を終の棲家とした。徳島とその女性に魅入られたのだ。

以前徳島を訪問した折、市内からも見える眉山の山頂にあるモラエス記念館に立ち寄ったが、それは藤原さんが後半を完成させる以前のことであり、数年前、改めて「孤愁・サウダーテ」上下巻を読み、徳島に強く惹かれて再訪したが、その足で神戸にも回り帰京した。その時の旅行記は「マラエスト俳句」と出して52頁の記事にしてこのブログに乗せたが、今回はその旅の延長というか、彼の足跡を辿る探求の旅で、前任地マカオに行くことにあった。

四国だからと言うわけではないが、遍路道の同行二人、弘法大師に代わってモラエスと伴に歩いた徳島~神戸の旅。今回も又マカオのモンテの丘に立ち、アヘン戦争が終わった後の日清日露、太平天国の乱や辛亥革命、等々世情騒然としている中でのポルトガル国の立場、彼の立ち位置、又、早世した二人の日本人妻。彼の苦悩と言うか、憂愁を思わざるを得なかった。

二本目のの赤ワインを飲み終える頃、眼下に日本の島影も見えてきた。間もなく機は下降を始める。1週間程の短い旅であったが、モラエスの足跡を辿り、偲ぶ良い旅行だった。いつまでも心に残るだろう。同行二人。目には見えなかったが、徳島の地に骨を埋めたモラエスさんへの少しの供養にはなっただろう。

                                             完

(追記)
この旅行記は2016年9月29日から10月6日までの香港~マカオ~珠海~広州~香港へのモラエスを偲ぶ周遊を137回のブログ記事にまとめたもので、帰国直後、旅行等で不在にする期間を除いて、ほぼ毎日ブログUpしてきたが、今日、2017年6月1日までかかってしまった。今日でモラエスの前任地、マカオへの旅を終了し、明日、今から10数時間後になるが、新たなモラエス探求の旅が始まる。2週間かけてのイベリア半島周遊の旅。又、どんな出会いがあるだろうか・・・。



香港のどの辺を飛んでいるのだろうか・・
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以前の啓徳空港と違って、緊張感は少ない。
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香港よ、また来る日まで!
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安定飛行に入ると昼食が運ばれた。
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二本目のワイン。今期旅行の最後の飲食となる。
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ああ、眼下に日本の陸地が見えてきた。
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