昼食は古めかしい居酒屋風のレストランに入る。
レストランの中は窓もなく、薄暗く、実際、英国パブというかタバーンの感じだった。
奥に細長いレストランで、昼間の時間帯、お客は我々ツアーグループの10数人だけだった。
出てきたものは期待に反して、トースト、食パンだ。安いツアーだからやむを得ないか・・
シェイクスピアの生まれ故郷での昼食。歴史がありそうな古めかしい木造レストラン。ツアーメンバーは入る前から期待に胸膨らませ、そわそわしている感じ。まだ昼間なのに室内は薄暗く、窓もなく外光は差し込んでこない。Tavernと言うのがどんなものか実際には知らないが、これが古風なイギリス風の居酒屋なのか。入り口は僅か1間程の広さだが、奥行きが深く、ウナギの寝床のようにどこまでも奥の方に繋がっている。その途中に生ビールのサーバーカウンタ-があり、如何にも洋風飲み屋と言った感じだ。
一番奥の部屋が少し膨らんだ小袋のようになっていて、テーブル席などもある。それぞれ銘々空いた座席に着席するが、矢張り、夫婦のペアはペア同士、単身参加者は単身同士の組み合わせになるようだ。昨日から今朝にかけて食事も数回共にし、多少は打ち解けた感じにもなるが、そもそも背景や、どんな立場、趣味の人かは知らないので、表面的な会話しか成り立たない。それでも同じツアーグループの運命共同体のようなものが芽生える。
料理はと言うと、これも又期待に反しての超イギリス風のブレッドだ。安いツアーだから豪華な昼食を期待する方がどうかしている。同じトラピックスでも中国ツアーなら、それなりの中華料理にあり付けるが、ここは飲食費の高い欧州、イギリスだ。B&Bは欧州での木賃宿の略称で、Bed & Breakfastの意味と理解していたが、イギリスに於いてはBed & Breadと理解することにしよう。
トーストが運ばれるまでの間、少し間合いがあって、ギネスを頼む。ここでは普通のドラフトもギネスも同じ値段だ。折角イギリスまでやってきたのだから、ギネスを飲もう。給仕は店内中ほどにあるビヤサーバーの所へ行って、ビヤカップを持ってくる。この点、ビヤサーバーが店の真ん中にあるのは都合がよい。尤も、昼間の今の時間、店にいるお客は我々ツアーの10数人だけなのだが・・。
ギネスの味はギネス。日本で飲んでもどこで飲んでも黒ビールの味には変わりない。約1時間弱、イギリス風昼食を食べ終わり、これから次の訪問地コッツウォルズへ向かう。再びエイボン川を渡り、シェイクスピアの町に別れを告げる。シェイクスピアの本も読んだことの無い人間がこの町にやって来るのは少し滑稽な気もするが、今はそれを越えてこの町自体が観光名所になっている。金色夜叉など読んだことの無い人が大挙熱海に押し掛けるようなものだ。
コッツウォルズに関しては誰だったか、10数年ほど前に旅行好きの女性作家が書いた写真付きのガイド本読んで、景色の穏やかなこと、落ち着くこと、英国農村で一番美しい所、等々ベタ褒めだったが、これからその田舎町に向かうのだ。成程、なだらかな起伏の農地が広がる。日本のような山もなければ、谷や渓谷もない。穏やかな草原だ。確かに心休まる光景が続いた。
これからコッツウォルズの田園地帯を暫く走る。
ボートンまでの約1時間、手入れの行き届いた、美しい田園風景が続く。
所々、小さな集落を通り過ぎる。日本の紅白にも出た英国の歌姫。こんな田舎町からすい星のように現れたのか・・
高い山や渓谷はなく、どこまでもなだらかな牧草地が続く。
間もなくボートンの町に到着だ。