ちゃおチャオブログ

日々の連続

4.20(月・小雨)駅前の花屋。

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朝から終日小雨。気温も上がらず3月初旬の気温とのこと。ストーブの灯油は終わり、エアコンで温めているが、ストーブと比べ暖かさが違う。三寒四温とはよく言ったものだ。

 

駅前の花屋が店を閉じた。店を閉じる数日前、店主が駅の方向に歩いて行く後姿を見たが、どこか淋しげだった。やせ形で上背が高く、骨格のしっかりした人だった。それがどことなく悄然とした歩き方だった。それから何日か後店の前を通ったら、シャッターが下りたままだった。このコロナ禍、飲食店や小売店が自発的に店を閉めているところが多いが、この花屋に関しては、それとは別だろう。数か月、或いは数年前からそんなに売り上げがあるとは思えなかった。店先の客の姿は余り見なかった。悄然とした姿は今に始まったことではなく、もうその頃から言葉も少なく、元気もなさそうだった。

奥さんも働き者で、いつもジーパン姿で前掛けのような紺の前垂れをして、甲斐甲斐しく働いていた。主人が花の買い付け等で不在にしている時、店を守っていたのだろう。主人に似て、細身のすっきりした美人だった。花屋の女主人が似合っていた。

自分が小金井に移って暫くしてから店を開いたので、もう30年にはなるだろう。その頃は夫婦二人で元気に店を切り盛りしていた。動きにも張りが感じられた。駅から少し離れた先に古くからある花屋が1軒あったが、新たに開店したこちらの花屋の方が駅にも近く人気があるようだった。

この30年の間に周囲の小売店の入れ替わりもあり、この2軒の花屋と向の酒店、隣のスーパー、それと数軒の飲み屋スナック以外は、店が代わったり、事務所になったり、クリーニング取次店、理髪店等に変わったりしていた。

3年程前、丁度駅北口にスーパーマルエツが出来て暫くして、花屋の隣の安売りスーパーが閉店した。このスーパーは過去数回一時的に閉店し、その後経営者が代わったのか、名前を変えて又再開してきたが、今回は以前とは違って2年以上経った今も閉店したままだ。隣の花屋はこのスーパーへの客の流れで、行き帰りに多少の売り上げがあったかも知れない。自分もたまのその一人だった。今はその流れ客すらない。

花屋の経営がどんなものかは自分には分からない。かなり高価な蘭とか高級花卉を置いてあったが、花の命、もしそれ等の高価花卉が売れなければ、廃棄せざるを得ないだろう。そうした高級品が値段を下げて店先に安売りされていたことを見た記憶はない。だから実際、それ等の高級品が売り時を失った結果、その後どうなったかは自分には分からない。ただ言えることは、クリスマスとか母の日等の特別の日を除いて、今日1日普段の日よりも何倍も売り上げがあって、今日1日ほくほくだった、と言う事は無かったと思う。自営業ゆえ、給与取りのようなボーナスとか、特別残業代のような臨時収入もなかっただろう。月単位で言えば、ほぼ毎月同じような売り上げを上げてきたに違いない。多分花が好きで、花を扱う仕事についていることが二人の年間を通じてのボーナスであったのかも知れない。しかし好きなだけでは生活が出来ない。5-6坪の店舗であっても、駅前であれば、坪2-3万はするだろう。夫婦二人だから、従業員への給与支払いは無いとしても、高級花の廃棄処分費、家賃相当を捻出するにも大変なことだったに違いない。そのせいかどうか、花代も少し高めだった。自分もマルエツが出来てからはマルエツの方が6-7割がた安いので、そっちで買うことにしていた。最近は自転車で花屋の前を通り過ぎるだけだったので、顔を合わせても挨拶もなかった。尤も自分自身、一元さんのようなもので挨拶に値するような客ではなかったかも知れないが・・。それにしてもここ1-2年、チラと見ただけだが、覇気とか元気さは感じられなかった。売り上げも下降局面だったに違いない。

今日雨で駅前まで歩いて行った。花屋の前を通るとシャッターに張り紙がしてあって、長い間の愛顧を謝すと同時に3月31日で閉店を告げていた。次にどこそこに移る等の移転先の案内もなく、このまま廃業するのだろう。二人ともまだ60になったかならないか・・。奥さんはまだ若く50代だろう。名前を見ると鹿児島に多い苗字だ。年齢からして年金もまだだろう。この先どうするか・・。地元へ戻って再起するのか・・。今はコロナ禍で日本中に不況風が吹き荒れている。新たな仕事を見つけるにしても難しいだろう。だからと言って自分が何かの手助けをできる訳でもない。ただ幸と言えるかどうか、過去店内で子供をみたり、大きくなった子供が店を手伝っている姿は見ていない。多分この夫婦には子供はいなかっただろう。今まで30年、夫婦二人で頑張ってきたと同じように二人で頑張って行けば、これからの難局も乗り越えることはできるだろう。それ程深い接点はなかったが、自分の見た限り、この夫婦仲は至極円満に思えた。どの土地でどんな風に生活していくかは分からないが、頑張ってくれ、と願う他ない。又一つ身近な星が消えて行ってしまったような感覚だ。

 

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