ちゃおチャオブログ

日々の連続

7.5(火・細雨/曇り)無縁社会を生きる。

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 熱海の土石流で130軒程の住宅が押し流され、当初20人程の不明者と報じられていたが、住民基本台帳からすると100人以上の人が所在不明になっているようだ。市としては、不明者の氏名を公表し、連絡を待つ姿勢の様だが、本来、こうした災害が発生すれば、親類縁者、知人友人関係者などから市役所とか警察に問い合わせがあって、一体何人の人が土砂に巻き込まれているのか、1両日中には凡の判明は出来ると思われるのだが、この熱海の災害に関しては、そうした情報も無いようで、3日経った今日もまだ実数の犠牲者数は掴めていないし、発表もされていない。

無縁社会。隣との付き合いもなく、地域住民との交流も無く、こうした災害が発生しても、地域の誰からも気にかけてくれる人も無く、住民基本台帳での名寄せを行うしか、どこの誰が災害に巻き込まれたのか確認する方法がない。100数名の不明者の何人かは外国へ行っているとか、事故には巻き込まれていなかった人もいるだろうが、大半は土砂の中か海上に流され、その死を悼む累戚縁者もいないのだ。少なくとも数年前の広島安佐北区の土砂災害ではこんなことは無かった。犠牲者は直ぐにも判明し、発表もされた。関東、中国地方の地域の違いによるものなのか、熱海のこの場所が特別に高級住宅地だからなのか・・。ここ熱海伊豆山で人々は血縁地縁の失われた社会で生きていたのか・・。発生から3日経っても、実際の死者数、不明者数が確定できないとは・・。日本はいつからこんな無縁社会になったのか・・。

 

自宅から野川に出る途中に200mの程の緩い坂がある。毎日その坂をステッキを持って、左足が悪い初老の女性が歩いていた。ここ1-2か月、姿を見ていない。彼女は10年程前から、この坂と公園をリハビリの場所にしていて、自分もほぼ毎日姿を見ていた。姿を見るだけで、挨拶したり、話をしたことはない。この公園には毎日犬の散歩にやってくる常連がいて、彼女達も毎日顔を合わせている筈だ。だが、誰一人として仲良く話している人を見たことはない。皆、知らん顔。ただアメリカ人の何人かが、偶に行き違い、片言の日本語で挨拶し、「頑張ってね」などと、言葉を掛けているのを見たことはある。彼女も嬉しそうに、やや甲高い声で答えていた。毎日黙々と歩いて、リハビリを続けている彼女に取って、他者から激励されるのは嬉しいに違いない。

 

10年ほど前の最初の頃は分厚い平底の靴を履いて、左足を引きずるようにして歩いていたが、段々その靴底も薄くなり、歩きも早くなってきた。多分、脳梗塞か何かのリハビリで、訓練していたのだろう。徐々にではあるが、改善してきていた。いつも一人だった。誰かと一緒の同伴者を見たことは無かった。多分家族もいないのかも知れない。野川の坂へ行く途中の数十軒の住宅の人も毎日彼女が歩いているのを見ているが、誰も挨拶しない。言葉を掛けない。一人黙々と歩みを続けていた。病気を克服する為、ただ黙々と歩いていた。

そんな彼女が急に見えなくなった。再発して入院したのか、急死したのか・・、付き合いは殆ど無さそうだからコロナではないと思うし、コロナとすれば、見えない期間が長すぎる。犬の散歩者の視野から彼女が消えて、皆、どう思っているか・・。関係ない人だから、気にも掛けていないのか・・。視野の中には入っていなかったのか・・。

もし死んでしまったとすれば、自分としては残念だ。「ガンバレ」と一度も声を掛けてやらなかったことが・・。もしも再入院で、数か月後に再度野川の坂に姿を見せたら、今度こそ、フランクで、垣根のないアメリカ女性のように、彼女を元気づけしよう。勇気を出して。何ら恥ずべきことではないのだ。

 

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