ちゃおチャオブログ

日々の連続

紀の国訪問記(45)太地町のヒーロー落合博満と映画「The Cove」。

町内循環バスは再び先刻のバス停に戻って来た。

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  • 沢山の漁船が係留されている。今は禁漁中なのか・・

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  • そのままバスに乗って駅に向かうと、港の端のほうに中規模の民間病院があった。外科、内科、小児科等々、この町の命の拠り所だ。

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  • 道の駅の前の南紀の海。前方が那智勝浦だ。道の駅もクジラ料理店も開店休業のようだった。

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僅か100円の町内循環バスで、太地町をぐるりと1周できて、随分と安上がりな観光ができた。ミニバスの小さな窓からの眺めで、視界は限られたが、それでも100円と言う料金を考えたら、充分満足できる観光だった。地方の田舎の人は一概に保守的で、部外者との接触を避ける傾向があるが、この町の人は特にその傾向は強いかも知れない。丘の上の住宅地からそれぞれ二人の老人が乗車してきたが、顔馴染みの運転手とは気安い会話をするものの、当方、どこから紛れ込んできたのか分からない異邦人には、一瞥しただけで、目線を避けている。厄介者には巻き込まれたくない、と言った感覚だ。いや或いは都会人からのコロナ菌の感染を恐れているのか・・

この町は10数年前にリリースされた映画「The Cove」で一躍有名になった。クジラの囲み漁。それで多くの日本人はこの町の伝統捕鯨を知ることになり、多分多くの人も観光で押しかけて来たのだろう。それ以上に一部の外国人、反捕鯨団体やら動物愛護団体が押しかけてきて、この町を反捕鯨のシンボルにしようと押し立てた。映画監督の意図がどこにあったのかは自分には分からないが、グリーンピースシーシェパードを始めとする何等かの悪意乃至背後関係を持った過激団体に利用され、この町は揉みくちゃにされた。そうした過去の苦い経験を持っているこの町の人々は、外部からの人間を殊更警戒するのだろう。

ホステル「ニーチェ」の主人も巡回バスの運転手もこの町で生まれ育った人間ではないが、永らくこの町に住み、生活している。が、根っからの地元民ではないにしても、ザ・コーヴ、クジラ漁の話題には避ける気配があった。元々二人は撮影現場となったコーブ、その洞窟には行ったことのない口ぶりだった。彼等がこの町を代表する訳ではないとしても、町の人々の気持ちを代弁しているかのごとき雰囲気だった。映画撮影がこの町の人々からクジラ漁の話題を避けているかのごときだった。この町の人々にとっては、罪作りな映画で、心のトラウマとして深く残っている感じでもあった。

それに比べ、落合博満については、彼等から積極的に話を持ってきた。自分は彼等から話を聞くまで、落合記念館がこの町にあることを知らなかった。落合博満。野球選手としても監督としても素晴らしい成績を残し、数度の三冠王、ホームラン王、リーグ優勝、シリーズ優勝の栄冠に輝いている。だがその活躍ぶりとは裏腹に、マスコミからちやほやされ、持ち上げられた記憶は自分にはなかった。秋田男鹿半島出身で、現菅総理同様に、口下手な点がマスコミ受けしないマイナス要素になっていたのかも知れない。マスコミの評価とは別にこの町の人々にとって、球界の大英雄がこの町を愛し、更には記念館を作ったことに誇りを持っていた。宿の主人もバスに運転手も、沢山のフアンが落合記念館にやって来ることを誇らしげに話していた。本州の最北の半島に生まれ育った落合が、本州の最南の半島に居を構え、終の棲家とする。良い話ではないか。そうだ、自分ももう一度ここ太地に来ることがあれば、今度は落合記念館も観光ルートに組み入れよう。

高台の住宅地を巡回したミニバスは坂を下り降りて最初に乗車したバス停の前を通り、港の端にある中規模の民間病院の前で二人の客を下ろし、道の駅の前を通って太地駅に到着した。この道の駅が現在営業中かどうかは不明だったが、駐車している車も無く、この中にある筈の鯨料理のレストランも開いているとは思えなかった。それでも駅前の酒店は、昨夕はシャッターを下ろしていたが、今日の今の時間、シャッターは開けられていたが、ここも又、人の気配は皆無だった。原因が過疎化なのかコロナ禍なのか、自分には判断し兼ねることだった。

 

町営の循環バス。駅前の酒店は今は開いている。丘の上から駅までは20分程度だ。

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JR太地駅。駅舎は立派だが、ここも無人状態だ。

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高台にあるホームには、それでも数人の客が電車を待っていた。

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太地ともお別れだ。だが、いずれもう一度来てみたい。

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