万関橋を過ぎると、もうそこは浅茅湾の入り口だ。深い湾が入り込んでいる。
波静かな湾だ。
厳原から凡そ20分、海面から100m程の高さに架かる万関橋を渡ると、その先はもう浅茅湾だ。深く入り込んだ湾が国道の道路際まで入り込んできて、ウナギの寝床以上の湾口だ。そこから一山超えると、浅茅湾に出る。リアス式海岸の多島海で、小さな小島が目の先の海上に幾つも浮かんでいる。バスが止まった先の海上に、鳥居が何本か並んで立っている。それは恰も海の向こうからまれ人がやって来て、この宮に遷宮したかのイメージだ。
和多都美(わたつみ)神社。海の上の神社で、海の神様と言われている。海上に建つ大鳥居は以前厳島神社で見たことがあったが、あそこも海の神様、宗像三女神の市来姫が祀られている。海の向こうからやって来た稀(まれ)人神。「聞けわだつみの声」は、太平洋戦争中の戦没学生の遺稿集をまとめたもので、死期に向かう当時の出陣学徒の生の声、国を思い、同胞家族を思う純粋で純真な心の叫びが集められたもので、読む人の涙を誘う物だった。 水漬く屍、 その犠牲の上に 今の日本があった。
海洋国家日本。如何なる事情で大陸、半島からこの間に横たわる荒ぶる海を乗り越え倭の国にやってきたか・・。地の民、縄文人を下に従え、国造りの神は海の向こうからやって来た。その象徴的な神社がここ和多都美神社であり、全国でもこの名前の神社は、ここ対馬の豊玉町にしか存在していない。5つの鳥居が海の向こうまで伸びている。今はコンクリートで造られているが、古代には木であった。その木が何だったかは自分には分からないが、自分はそれが梛木(なぎ)だったと思いたい。熊野速玉大社の御神木だ。今日の午前の観光はここと、この裏の小山、烏帽子岳展望台があれば十分だ。
一山超えると、和多都美(わたつみ)だ。
今日の最初の訪問先、和多都美神社にやってきた。
鳥居が海の上に立っている。流石に海の神様だ。
この鳥居の先に神社の社殿がある。