ちゃおチャオブログ

日々の連続

西国観音まほろば奈良の巡礼記(45)近鉄西大寺駅前、安倍元総理暗殺現場。

  • 近鉄西大寺駅改札を出ると、大きなガラス窓の向こうに元総理暗殺の駅前ロータリーが見えて来る。

ロータリーは大きく改造されていて、1年前の面影はどこにもない。

 

近鉄西ノ京駅からは数駅先に西大寺駅がある。この駅前広場で安倍元総理が銃撃され、暗殺された場所だ。夕刻の飛行機にはまだ十分時間はある。ホテルに戻る途中、当然ながら途中下車しての現場百遍だ。稀代の英雄がどんな場所でどの様に暗殺されたのか。歴史の目撃証人になっておきたかった。

西大寺駅は幾つかの路線が交わっているのか、駅は大きく構内も賑やかだ。JR奈良駅よりもむしろこちらの方が賑わっている。奈良駅方面は観光客相手の寺社仏閣が多いのに比べ、西大寺は市民の街で、周辺の人口も増えているのだろう。人口動態も奈良駅周辺よりもこちらの西側、西大寺周辺に比重が大きくなっているのだろう。だから元総理が奈良の街頭演説の場所としてこの駅前を選んだのは納得できる。

改札の駅員に銃撃場所を聞いたら、直ぐにも教えてもらえた。その場所はまだ聖地とはなっていないだろうが、駅関係者には自明の場所だった。駅のエレベーターを下ってその場所に向かうが、大きなガラス窓を通して、既に現場の状況が見えて来る。一年前、テレビ映像で何回となく見た三角ガードレールはそこにはなく、随分綺麗な駅前ロータリーに変わっている。当時の生々しさは伝わらない。

駅ビルを出て現場に立つ。一年前と変わっているので、どこに向かって両手を手向けるかも分からない。どこかに生花でも置かれているかと探したがそれもない。彼の死は一年で既に風化したのか・・。このロータリーを一周ぐるりと回って見ても、彼の匂いすらも感じられない。この駅前広場を大々的に改造し、その忌まわしい事件を人々の記憶の中から消し去ろうとしているのか・・。

一代の英雄、この場所に死す。総理を退いた後も、最大派閥の長として政界に君臨し、彼の首が立てに振られなければ、何事も物事は前に進まない。顕然たる力の源泉は一〇〇人を越える派閥の長で居続けることであり、弱小の他派閥も否応なく安倍派にすり寄り、従わざるを得なかった。彼としたら、更に安倍派を強大化させる為に、総理を退いた後にも、選挙運動に邁進し、この場所に立ったのだろう。祖父岸信介のように、突然の総理辞任と共に御殿場に隠棲し、そこから隠然たる支配をするようなことはしなかった。山梨上九一色村の別荘も今となっては無用の長物になった。

一生の梟雄、この場所に死す。歴代最長の総理の座にあって、良きにつけ悪しきにつけ時代を変えて動かした。国家の幸いは彼には子供が無く、その家系が先々の国家の私物化に向かうことが無くなったことだ。彼の功罪は後世の歴史家が正当に評価するだろう。現総理には無理だろうが、後の総理がこの場所に立派な記念碑を建て、彼の突然の死、暗殺に斃れたことを顕彰するだろう。暫しこの広場に立ち、流れる車と人流を眺め、既に風化しつつある事件の背景と10年後を想像した。

 

駅ビルを出て、広場に立っても当時のガードレールはどこにもなく、どこが暗殺現場かは全く分からない。

 

正面が西大寺駅。通行人に暗殺場所を聞いても意味がない。

 

1年前の生々しい衝撃は全く改変された駅前広場からは殆ど受けることはなかった。