ちゃおチャオブログ

日々の連続

12.15(日・晴れ)無縁社会の悲しい出来事。

 

今日の毎日新聞朝刊一面には三分の2程のスペースを割き、まだそれでも足りなくて3面のほぼ全頁を埋めて、去年の9月、奥多摩湖駐車場で練炭自殺した46歳女性とその兄の48歳男性の自殺に至ったまでの掘り下げた追跡記事を載せていた。

 

二人は多摩地区の1軒家の借家住まいで、月の家賃は15万円。彼女は都心に本社のある一流企業の正社員で、チームリーダーもやってきた。手取り月収は25万円。家賃が高く家計を圧迫するが、月10万で兄妹二人で生活できない額でもない。

 

東北地方出身の父親は個人事業のリフォーム業者で20年ほど前都心からこの借家に引っ越して来た。経営は思わしくなく、赤字続きで、女性も高校卒業後、仕事を手伝うようになったが、業績は回復しなかった。2歳上の兄は引き籠り状態で、外での仕事は出来ず、リフォームを手伝っていたが、赤字が無くなることはなかった。

 

女性は20代後半、現在の会社に就職でき、月25万からの手取り収入を借金の返済に充てていた。両親は病弱で、今から7年ほど前、母親の健康保険が支払えず、充分な治療も受けられず、体重が20キロも減って緊急入院となった。

 

父親も20年夏に末期がんで他界した。その後母はせん妄状態になり、ほぼ失明した。母の面倒は自宅で兄が介護していた。二人が自殺する前の半年前、母親はゼリーを詰まられて窒息死した。両親の年齢は記事には出ていないが、自分と同じ70代後半位だろう。

 

二人はもっと家賃の安い狭い家への転居を考えていたが、借家を退去するに当たっての修繕費用を出すこともできず、引っ越しできない状態でいた。親戚にも頼ったが、今まで不義理をしていた関係もあったのか、又はそれだけ余裕のある親戚はいなかったのか、誰からの援助の手は出なかった。

 

9月25日、給料振り込み日、銀行で全額を下ろし、奥多摩湖に向かった。残されたスマホには、あて先はなく、「たくさんの人にご迷惑をかけてしまって申し訳ありません。もう限界です。兄を巻き込んでのこの選択は絶対に間違っているけど、この選択肢かなかった。申し訳ありません。よろしくお願いします。ありがとうございます」と結ばれていた。死後残された借金は400万円弱。彼女は親戚には相談したが、行政への助けを求めることもせず、自殺した。僅か400万円で命を絶ってしまった。

 

奥多摩湖駐車場の写真は見慣れた光景だ。以前何回かこの場所へ行き、車を止めたこともあった。二人はここへ来る前にスーパーに寄り、練炭を買った。途中のどこかで最後の食事もしたのだろう。もうこの時にはためらう気持ちも無かったに違いない。一直線に死に場所に向かった。9月の月曜日。往来する車もあっただろうが、それ程は多くはなった違いない。多摩湖の情景は二人にどう映っただろう。二人がまだ小中学生の頃、家族と一緒に来たかも知れない。両親の元に旅び立とうとの一心だったかも知れない。

お気の毒な家族、兄妹だった。

 

世の中が不公平だ。3歳5歳の心臓病の子供が米国での手術費用を賄う為にクラウドファンディングで3億、5億の金を集め、その大半は米国の病院に支払われるが、その5歳の子供がその後、どうなったかは聞いていない。社会の一方では、ちょっとしたPRなどで直ぐさまに数億円の資金を集めることもできるが、こうした社会から見放された家族に取っては、高々数百万円のお金に苦しみ、命を絶って行く。誰にも気づかれず、一人悩み、窮地に陥り、究極の選択、自殺を選ぶ。何とかならなかったものか・・。