帰りは市内循環バスに乗って駅に向かう。
市内のあちこちを回って、良い観光になった。
今、八幡堀を渡る。運転手さんの説明も地元の人だけあって、要領を得ていた。
第31番姨綺耶山(いきやさん)長命寺への参拝を済ませ、再び車道を下り歩いていると、後ろからひたひた足音がある。誰もいない山中で奇妙だ。後ろを振り返ってみると若い男性がジョギングをして上から降りて来た。・・ああ、魔物ではなく人だったのか・・。自分が参詣中に登って来て、石段の上で逡巡し、矢張り車道を下ろうと決めている間に参拝を済ませ、降りて来たのだろう。
自分の心配顔を見たからなのか、こんな場所を車ではなく歩いている参詣者に興味を持ったのか、走るのを止めて、一緒に歩いて下ってくれる。「どちらからですか?」と聞かれ、「昨日東京から来て、今日は竹生島を巡礼しました。この坂道をジョギングとは熱心ですねえ。」と逆に聞いた処、「自分は近江牛の牧場で働いていたが、このコロナで仕事が無くなって今は失業中。時間があるから毎日こうしてこの寺に登り、ジョギングしています。」と。純朴そうな顔つきの青年は仕事が無くて余った時間を毎日この坂道をジョギングしているとのこと。
暫くたわいない話をしながら、坂を下って来たが、自分の歩行スピードが余りにも遅いのか、暫くしてから「じゃあ」、と言って、先に走って下って行った。折角知り合えた。駅前辺りの赤ちょうちんで飲んでみたいとも思ったが、又、一人になって、黙々、休み休み、下り降りた。バス停まで戻ると、駅行のバスが丁度出た後で、次のバスまでには1時間程もある。人家もまばらな田舎道で、近くには何もない。疲れた足を癒すには丁度良いとベンチに座っていると、ミニバスがやってきた。運転手に聞くと、市内循環バスで、あちこちぐるぐる回って時間はかかるが、駅までは行く、とのこと。
普段、殆ど乗客のいないミニバスの運転手は、遠方から巡礼にやって来た客が珍しいのか、中々の話好きで、車内でいるいろいろとこの町の事、街の風物、今走ってる通りの名前や名所旧跡などを観光ガイドよろしく説明してくれる。実際、近江商人発祥の街と言われる位に、高級住宅地の街区は綺麗に整った街並みだ。メンソレータムで有名な近江兄弟社の話もしてくれる。香港のタイガーバームと同じように、今のような抗生物質の無かった時代には、飛ぶように売れたのだろう。
この町には掘割を舟で巡回する水上ツアーもあるようだ。そのメインの八幡堀を通り、船着き場なども教えてもらい、近江八幡駅に戻って来た。僅か150円の巡回バスで思わぬ観光ができた。運転手にお礼を言ってバスを降りたら、もう5時になっていた。そうだ、ここで山さんの言っていた鮒寿司を食べて帰ることにしよう。駅前を見ると余り飲食店は見えないが、駅ビルの並びに1軒居酒屋があり、鮒寿司の看板も出ている。躊躇なく店に入り、注文した。
出て来た鮒寿司の大きさに驚いた。自分の知っている鮒は5-6cm、大きくても精々10cm足らずだが、この寿司の大きさは20cm以上はあり、アユよりも大きく、ヤマメ、ニジマス程もありそうな大きさだ。食べやすいように刺身のように2cm幅位に切ってあるが、一口口に入れた時、その塩辛い事! 塩を多量にまぶして漬けてある。これがなれ寿司なのか・・。北廻船のように遠くの北海道まで航海して行く船員にはこれ程の塩で漬けてないと、身がダメになってしまうのだろう。折角注文した鮒寿司だ。初めて食べたということもあったが、塩辛いのを我慢して1尾平らげた。ビールとお酒のお供がよく合った。
近江八幡駅に戻って、丁度5時。今日はこれで終わりにしよう。
近江八幡、いろいろと見る所は多そうだ。
駅ビルの並びに居酒屋があり、山さんが言っていた鮒寿司を注文。
鮒の大きさにビックリ! 更に驚いたのは、その塩辛さ!