時間は止まらないし、待ってはくれない。時々刻々を刻み、針が1周し、1回転し、60回繰り返せば、1時間は過去に過ぎ去って行く。40年間住み続けた我が家、感傷に浸る暇もなく時は進み、過去に追いやる。明日の昼には運送業者がやって来て、荷物を運び出し、自分も荷物と一緒にこの家を出て行く。
子供が5歳と3歳の時にこの家に移り住み、高校大学を出て社会人になり、家を離れて行った。妻は7年前に亡くなり、去年は七回忌を済ませた。この家で自分が一人で生活し続けることに困難を感じて来た。周りには挨拶を交わす程度の人はいても昵懇ではない。ここでいつまでも生活し続けることにそれ程深い意味合いはない。偶々40年前に家を買って、住み続けて来たに過ぎない。
残りの人生が後何年与えられているのかは自分には分からない。だが今の処は元気だ。後3年は生きられるだろう。転居をし、後3年、83までは生き抜こう。80を過ぎてからの新たな人生、それも又楽しからずや・・。既に多くの知友が鬼籍に入った。10数年前の石橋さん、小池さん、その後の笠倉さん、樋口さん、星野さん、岡先生と片桐君。そうみんなあの世で自分の生き様を笑っているようだ。小池さんなどコモちゃん、早く来なよ、こっちの方が楽しいよ、と言っている。
諸行無常。人生はままならないし、常ならない。自己の意志か他己の意志かに拘わらず、人生は無常だ。明日から常ならぬ人生を生きることになる。それも又、楽しからずや・・。