ちゃおチャオブログ

日々の連続

「サウダーデ」モラエスの愛した町(11)夜の阿波踊り。

居酒屋からホテルに戻る途中、新町川沿いの広場とか、公園のあちこちで、来週に控える阿波踊りの練習風景が見られた。
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老若男女、様々な市民が「連」を作って、練習に励んでいる。
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これから準備をして始める「連」もいる。
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小さな子供まで親と一緒に輪の中に入っている。
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スレスレスレスレ、踊る阿呆に見る阿呆!ラジカセの音楽に合わせ、踊り狂っている。
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徳島駅前の居酒屋からは新町川沿いの遊歩道を歩いて帰ることにした。川沿いに細長い公園も作られていて、それは観光客用なのか、市民の為なのかよく分からないが、日中橋を渡った時には全くの散歩者も通行人もいなかったが、夜は様変わりになっている。既にこの遊歩道・小公園に来る以前から、人々は薄暗い街灯の中、そわそわとどこかへ急いでいる。自転車でせわしなく走り抜ける人もいる。又、遠くから鉦と太鼓の歯切れのよい音楽が聞こえてくる。それも1か所からではなく、あちこちから、後ろの方からも、横の方からも。

先刻、そごうデパート前の歩道橋テラスでやっていた阿波踊りの練習を、あちこちでやっているのだ。特にこの川沿いの公園や遊歩道、歩行者用横断橋の上、ちょっとした薄暗闇の中。夜の公園のぼんやりした街灯の下で、4-5人のグループから、20人を越えるような大人数まで、公園の木陰であったり、真ん中辺であったり、隅っこの方で遠慮勝ちだったり。子供の連だったり、女性だけの連だったり。皆、無駄口も叩かず、2拍子の鉦と太鼓、三味線の旋律に合わせ、阿波踊りを踊っている。駒下駄のカチャカチャする音が、夜の暗闇に響いている。


< 阿波踊り 駒下駄響く 夜の闇 >


練習とは言え、皆真剣だ。一糸乱れぬ踊り。黄泉から祖霊を呼び、祖霊を又黄泉に送り返す。お盆の間の霊との交流。各地での迎え火、送り火精霊流し、或は京都五山送り火等々、全国各地にお盆の行事は多々あるが、ここ徳島の阿波踊り程、特異なものはない。夏の風物、盆踊りが特化して、こういう形になったのか、阿波踊りを始原として、各地に盆踊りが広まって行ったのか、・・、当方には分からない。勇壮な沖縄のエイサーが男の踊りとしたら、ここ徳島の阿波踊りは、女の踊りに違いない。たおやかで、且つ芯の強い女性。彼女、瀬戸内晴美もそんな女性だった。


天地の交流、人と祖霊との融和。一遍上人の踊り念仏は本の中でしか知らないが、こうしたものだったかも知れない。昼間の半分ショー化した見世物の踊りではなく、この夜の闇の中で雑音、雑念を振り払ったごとく行われるの純粋さが良い。そうそう、高千穂の夜の御神楽のように。

今は、この阿波踊りを真似する市町村も増えて来て、自分が住む小金井にもあり、中央線では高円寺の阿波踊りが歴史も古く、規模も大きい。しかし、それ等は明らかにショー化したもので、今見ているこの徳島の夜の祖霊との交流が欠けているものだ。だから、それは単に街頭パレードの一種となり、規模の違いはあるとしても、サンパウロのサンバのパレードと変わらない。

いつまでも伴奏音と駒下駄音だけが響いている。いや、もっと耳を澄ませば、踊り子の洗い呼吸音も聞こえてくる。いやー、こんな間近で、こんな生々しい、迫力のある練習風景を見られるとは、全くラッキーだった。この時期、徳島へ来て、本当に良かった。モラエスにも阿波踊りを紹介した本もある。今度機会があれば、読んでみよう。


< 盆中日 踊りあかせよ 鉦の音 >



カチャカチャカチャカチャ、この駒下駄の響きも良い。
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ああ、子供達のグループだ。一休みしている。
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さあ、これから始まるぞ!スレスレスレスレ、エノヤッササー!
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こんな子供の内から慣れ親しんでいる。後世に残る伝統行事になること、間違いない。
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夜のしじまに、鉦や太鼓、ラジカセの音楽が、いつまでも鳴り響いていた。
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