ちゃおチャオブログ

日々の連続

5.11(月・晴れ)浅間のムサシノキスゲ。

 

f:id:commodore:20200511224416j:plain

都立浅間公園、本山の山頂には、浅間神社の古い祠がある。この里山は、この神社の名前からとられている。

 

f:id:commodore:20200511225258j:plain

中山の窪地に在る東屋。例年、この季節にはここの広場で、キスギフェステバルが行われている。(2日前、この東屋で山さん、Inaさんと3人での清談が行われた。)

 

f:id:commodore:20200511225914j:plain

今日は曇って見えないが、この辺りから、府中の街並みの先80キロ西方に富士山が見える。

 

f:id:commodore:20200511225020j:plain

前山にある鎌倉時代末期の武将、人見四郎のお墓。この辺りは、鎌倉方と室町を作った足利勢との主戦場だった。

 

都立多磨霊園の西に小高い丘が見えるが、そこが浅間丘陵である。丘陵とも言えないほどの小さな里山だが、そこは昔から浅間山と呼ばれている。全長800m程の丘の連なりで、そこには高さ80m程の小さな峰が3つあって、それぞれ本山、中山、前山と呼ばれているが、この丘陵の名称「浅間」は本山の山頂にある小さな神社、浅間神社に由来する。 浅間とは、今も煙を吐いている浅間山と同じ名前で、高さ80mの小山が2500mを越える上州浅間山と比較すること自体がおこがましいが、この神社、御祭神が木花咲耶姫(このはなさくやひめ)と大山祇神(おおやまずみ)であり、活火山の総本山、富士の浅間神社末社となっている。この小山に誰が最初に浅間神社を勧請したのかは、自分は知らないが、前山の遊歩道から約80キロ西方に富士山が真正面に眺められ、江戸時代流行った富士講の影響を受け、神社招来となったのではないかと思っている。ただ、江戸市中のあちこちに存在した富士塚富士講の立札、石碑、その他の史実を物語るものは、ここには一切ない。昔の神社がどれ程壮麗だったのか、想像も及ばないが、今残されているのは、石造りの小さな祠で、数百年の風雪を経た歴史を感じさせられるものがある。

 

元よりこの丘陵は火山とは関係なく、太古の昔、多摩川が今よりはずっと北東寄り、国分寺崖線を削るようにして流れていて、その当時の河川段丘として、ぽっかり島のようにこの場所が取り残されたと言われている。多磨霊園の直ぐ北川に清流野川が流れているが、今は小川のようなその小さな河川も、嘗ての多摩川の名残を残しているとも言われている。今ははけの道とはけの野川で、付近住民の良い散歩道になっているが、以前、この小さな小川が大量の流水を集めて、氾濫したこともあったが、多摩川の先祖返り程の大きなものではなかった。

 

野川流域のはけの道と同じように、ここ浅間も住宅地の中に浮かんだオアシスのような緑地帯で、本当に市中に残された里山の趣がある。ただこれ程贅沢な緑の空間があるにも関わらず、普段は散歩する人も少なく、ここへ来て、新型コロナの自粛規制で、室内に閉じ籠るのに飽きた人々が、健康増進のために以前よりも数倍も多く、日々の散歩に訪れている。山の神、木花咲耶姫も内心喜んでいるに違いない。

 

多摩川によって形成され、今に残された里山。関東地方でも珍しい植生があって、春夏秋冬自身の散歩を楽しませてくれているのだが、今の季節、早春から初夏に掛けての植生が素晴らしい。3月の春蘭、笹葉銀蘭、タチツボスミレから始まって、シャガ、山吹、桜が終わり、今は又金蘭、武蔵野キスゲの季節を迎えている。ここでは浅間の自然を守る保存会等が中心になって、5月の第1週、キスゲ祭が行われているが、今年はコロナ禍の中、取りやめになっている。2週間続く祭りの際には、土日限定で、ボランティアの植物学芸員が何人かの参加者を引き連れ、ここに自生しているお花、動植物のアウトドア教育を提供し、自分も以前一度参加したこともあったが、大変有意義で参考になる内容だった。

 

ムサシノキスゲ。名前にある通り、原生地は武蔵野で、天然記念物になっている。野生のキスゲは殆ど絶え、唯一自生地として残っているのは、ここ浅間だけだ。日光を原生とするニッコウキスゲが今はキスゲの主流になって、全国の山野に点在しているが、このマイナーなムサシノキスゲが唯一この地で生き長らえているのが何とも言えない。金蘭の金色とキスゲのオレンジ。今この季節は金色に染められている。ちょっと空を見上げればニセアカシアは既に花を落とし、代わりにえごの木の白い花が空を覆っている。もう少しするともっと大きな合歓木が高い梢に沢山の花を咲かせ、そして今咲いているキスゲ、金蘭に代わり、山百合が斜面を覆う。今日も又浅間を歩き、昭和平成両天皇皇后陛下がこよなく愛しんだ吹上御苑を歩いている気分に浸ることも出来る。全く贅沢な空間。数時間の現生離脱を楽しんだ。

 

< 里山に キスゲの咲くや 初夏の風 >

 

f:id:commodore:20200511230035j:plain

今この里山では武蔵野キスゲが満開に咲いている。

 

f:id:commodore:20200511230153j:plain

このキスゲは武蔵野に自生する天然記念物だ。

 

f:id:commodore:20200511230242j:plain

斜面を覆うキスゲの花。

 

f:id:commodore:20200511230415j:plain

見上げると、空にはエゴノキも咲いている。

 

f:id:commodore:20200511230720j:plain

この赤い実は鶯カグラ。ルビーのような味がする。

 

f:id:commodore:20200511230849j:plain

偽アカシアはもう既に峠を越していた。

 

f:id:commodore:20200511231000j:plain

タンポポの異種だと思うが、キジムシロのような花も咲いていた。