ちゃおチャオブログ

日々の連続

12年ぶりの石垣島(21)西表島の限界集落。

西表島最南端にある白浜港。かなり大きな岸壁で、見た感じまだ10年も経っていないようだ。前方に埠頭が見える。

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これが以前の波止場の跡のようだ。

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新しい波止場の先端から岸壁を見る。左の建物はフェリーターミナル。

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白浜港のある祖納の集落。

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西表島と書いて「いりおもて」と読める日本人は何人いるだろうか。多分半数以上の日本人は「いりおもて」とは読めないだろう。特に旅行や地理に関心を持っていない人なら猶更だ。この「西表」は沖縄独特の音読みで、日本の古語が沖縄に残された事例とも言われている。

 

「西」は太陽が沈む方角、太陽が海に「入る」方角で、西を「いる」と呼ぶとどこかで教わった。同じように「南」は「ハエ」。沖縄の町名に「南風原町」があるが、これは「はえばる」。下関にフグの水揚げ港「南風泊漁港」があるが、それも又用例の一つだ。「南」のことを「はえ」と呼ぶようになった語源は自分には分からないが、今でも日本各地に残る漁師言葉で「はえが吹く」という言い方があるが、これは「南風が吹く」ことであり、海が荒れる様子を表現していた。南は海が映えているから「はえ」なのか。日本最南端の島「波照間」が連想される。

 

「東」に関しては、太陽が「上がる」方角であるから「あがり」とも言うが、「こち」が一般的で、菅原道真の短歌の「東風吹かば匂ひおこよ・・」にもあるが、沖縄では今でも「東風平(こちんだという町名も残っている。「東」を「こち」と呼ぶのはもう日本各地では失われ、唯一沖縄に残されている位である。尚「北」は不思議なことに「にし」と呼ばれ、沖縄では冬になると「にいみし(にし)が吹く」と言うと強い北風を指していた。同様に漁師言葉で「にしが吹く」とは今では漢字の「西風」を当てているが、本来の意味は「北風」を意味していたのではないかと思う。言葉は時代とともに失われて行き、又新たな造語、若い人にしか通用しない新語まども生まれてきて、高齢者には中々付いて行けない。

 

この西表島、やや台状の形をしていて、大雑把に言えば、台座の上の部分の右手に大原港があり、左手に上原港があり、台座の下の部分、右手に廃村となった古見があり、左手にここ白浜港のある祖納がある。江戸時代以降、廃村となった古見から島の中心がここ祖納に移り、この地区が西表と言われた。以前この島は古見島と呼ばれていたのだが、江戸中期以降、西表島と呼ばれるようになった。古見、自分はこれは「こち」の訛りではないかと思っているが、その西にある集落だから「西表」。筋が通る。

 

言葉が消え去って行くように、集落も消えていく。江戸時代以降、この島では10カ所を越える集落が消えて行った。今でいう限界集落だ。最初は小家族で移り住んだ集落も、その後人口は増えず、新たに生活しやすい場所が発見、開発され、そうした生活しずらい土地から人々は移動し、新たな集落を形成していく。大きな港湾施設が建設された島の北部の大原、上原が発展し、人々が集まり、新たな島の中心市として発展しつつある。今見るこの白浜港もこの地区の人口には不釣り合いに大きな岸壁が建造されているが、数十年先には大原、上原同様に人々が集まってくるのかも知れない。

 

波止場の先に二つの小島、内離島、外離島が陸地からの続きの半島のように横たわっていて、外海からの荒波を防ぎ、大きな港湾のようになっている。この二つの島には、今現在合計しても100人は住んでいないだろう。限界集落だ。だが交通手段としての船は欠かせない。国は巨額の予算を投じ、立派な波止場を造り、島との間に1日4回の連絡船を就航させている。多分殆ど無人の客を運んでいるのだろう。絶滅危惧種の動植物が人の手により厚く保護されているように、この島の人々も国により保護されている。島の住民がいつまで住み続けているかは分からない。この波止場が島との渡船用にいつまで利用されるかは分からない。しかし将来又日本人の生活様式が代わり別の目的でこの港湾が活用され、大原、上原同様に集落が栄えてくるかも知れない。それは自分には分からないし、将来の事は誰も予測できないだろう。

 

港湾建設により、今は白浜は縮小しているが、海の水は綺麗だ。

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この埠頭からは前方の島、内離島へ連絡船が1日4回運航されている。

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白浜から先の集落は殆どまばらで、殆どが限界集落だ。

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バスの出発にはまだ時間があるが、ターミナルに戻って、バスが来るのを待って居よう。

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