ちゃおチャオブログ

日々の連続

石垣再訪(16)島の最北伊原間の浜辺と久松五勇士。

島の最北、終点の伊原間バス停の前には綺麗な郵便局があった。

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その隣には交番もあって、ミニパトカーが停められていた。

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道路の反対側には小中学校もあるが、コンビニや食堂は見当たらない。

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この県道は更に2‐3キロ先の最北の灯台まで続いている。右手に公民館が見える。

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公民館の敷地の一角に久松五勇士の上陸記念碑が建っていた。

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バスの終点伊原間は船越の一つ先だ。「伊原間」と書いて「イバルマ」と読む。「原」を「バル」と呼ぶのは南九州以南の地では共通だ。西南戦争の激戦地田原坂も「タバル坂」、沖縄の「ヤンバルクイナ」も漢字では「山原クイナ」と書く。即ち沖縄本島北部は山原(ヤンバル)地方と呼ばれているのと同一だ。「原」を「バル」と呼ぶ背景は良くは知らないが、沖縄地方には日本古語が色濃く残されていると言われているから、昔の日本では「原」を「バル」と普通に呼んでいたのかも知れない。

 

「船越」も面白い地名である。ここは丁度地峡のようになっていて、陸地が細まって、両側の海から挟まれているような狭さだ。だから軽い船ならぐるっと島の先端を回って反対側の海に行くよりは、陸地を持ち上げて運んだ方が早い感じもする。村の漁師が実際にそうしていたかどうかは知らないが、そうしたイメージも浮かぶような地峡の狭さだ。船越の地名はここ以外にも日本の各地にも似たような形状に場所には付けられているのだろう。俳優の船越英一郎とか著名な彫刻家舟越保武の名前の謂れは知らないが、こうした地峡と関係するかも知れない。

 

バスの中では次の停留所の名前がテープ音声で案内されるが、伊原間はそのままに「イバルマ」と案内されていたが、ここ「船越」に関しては最初に「次はフナクヤー」と案内され、続いて標準語の「ふなこし」と案内されていた。地元の方言では「フナクヤ―」と呼ぶ。言語学者の何人かは当然研究していると思うが、最初にこの地が「船越」と名付けられ、次いで方言として「フナクヤ―」と呼ばれるようになったのか、或いはその逆に後から「船越」の当て字を付けたのか・・。自分には「フナクヤ―」が「船小屋」と聞こえたが、興味は尽きない。

 

バスの終点伊原間は長閑な村落だった。石垣市内からは1時間半ほど。バス停の前には駐在所と郵便局と小中学校が建っている。集落の中心地のようだが、そこには雑貨店も無ければ食堂も見当たらない。人口希薄地だから、商店も食堂も成り立たないのだろう。立派な郵便局の先に今は閉鎖中だが大きな公民館があり、その敷地の中に「久松五勇士」の大きな顕彰碑が建っている。この五勇士とは日露戦争時、宮古島の沖合を通過したロシアバルチック艦隊を発見した宮古島漁師が島の長老、役所に報告し、島では五人の屈強な漁師を選抜して、電信設備のある石垣島までサバニを急送させ、東京大本営に通報したという美談を顕彰したものだ。

 

司馬遼太郎がここまでやってきたかどうかは知らないが、彼の「街道を往く」の中にもこの美談は出ていて、五人の漁師の美談もさることながら、自分に強く印象残ったのは、イタリアのマルコーニが電信装置を発明してから僅か5-6年後には既に日本の各地に電信網が張り巡らされていたという、当時の日本の欧米先進国に追いつこうとする、強い意志が感じられた。宮古島はこの伊原間の上陸地から170キロ北方にあり、五人は昼夜交代でサバニを漕ぎ、15時間かけて石垣に到着したという。沖縄が日本国に編入されてから35年、沖縄県民の国を思う強い忠誠心が感じられるものだった。

 

この上陸碑の少し先、防風林の間を切り開いた先に天然自然の浜辺と海が広がっていた。浜辺は端から端まで2キロ以上はあると思われるが、そこには人の気配は全くない。沖のリーフに打ち寄せる波浪の音が、ゴウゴウと強い風の音のように鳴り響いていた。リーフの外は台風の影響でうねりが強いのだ。浜辺の両端の更にその先には先刻バスの中から見えたような円錐形の山が幾つも並んで見えていて、数万年前のこの地方の火山の強さを思わせた。

 

公民館の奥には神社か御嶽がある。

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防風林の切通の先には天然自然の砂浜が広がっていた。

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実に長大な砂浜だ。

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島の最北端だ。

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先刻見たのと同じような円錐形の山が幾つか並んでいる。

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