紀三井寺参道の入り口近くには波切不動堂もある。弘法大師が唐からの帰国の際、不動明王の利剣で波を切り、無事に帰国できた。
紀三井寺を後に、駅に向かう。
紀三井寺駅に向かう途中、「慈幸」さんという、日赤特別社員の家の前を通る。
ＪＲ和歌山駅、２階フロアーは３０数年前とは様変わりにモダンになっていた。
紀三井寺の長い石段を下り、住宅地の道路を歩きＪＲ紀三井寺駅に向かう。普通の足で５分程度だが、今の自分の足では１０分もかかる。この５日間、足を酷使したほどの距離を歩いた訳ではないので、矢張り、足の老化、脚力の退化だろう。歳相応なのか、平均以下なのかは自分には分からないが、ここ数年、めっきり衰え、その減衰の度合い、カーブは急降下だ。
駅までの途中の民家で、ある珍しい標札に出会う。慈幸さんという苗字のお宅で、珍しい名前に惹かれたが、その標札に「赤十字特別会員 銀色有功賞」と掲げられている。ああ、この人も日赤に寄付をしているんだ。慈幸さん、慈愛に満ちた幸ある人。寄付の習慣、寄付の文化の少ない日本に於いて、こうした人々が増えてくるのが嬉しい。自分はまだ白色の特別会員だが、頑張って、次にはこの賞を得られるよう、努力したい。後僅かの人生、寿命との勝負だ。
JR紀勢線も大阪に近いこの辺りでは電車の本数も多い。それ程待つことも無くやってきて、和歌山駅で下車。３０数年前２階の衣料品店でリバーシブルのハーフコートを買った駅ビルの２階売り場は様変わりしていて、全く東京と変わらない近代的な駅ナカショッピングセンターになっている。デジャヴューを見る思いで2階までエスカレーターに乗って来たが、３０数年前とは全く別の光景で、買うものもなく、駅北口にある空港シャトルバス乗り場に向かった。次のバスにはまだ1時間以上もあるが、クーラーの利いた待合室は、良い休憩の場となった。
関空連絡橋の暗い海を渡る。今回旅行の２か月前、毒カレー事件、林真澄美の娘が４歳の幼女を道連れにこの連絡橋から海に飛び込んだ。死刑判決の真澄美被告は、今なお再審請求を訴え続けている。母親の理不尽な行動に人生を狂わされた子供たち。紀州のドンファンが急死してから既に３年になるが、４か月前、２５歳の元妻が殺人罪で逮捕された。真澄美同様、又長い裁判になるだろう・・。Love Loveの頃の二人は、愛睦まじく何回となくこの橋を渡ったであろう。
早々と空港に着いた。９時５分発、東京行の便にはまだ３時間もある。待つことには慣れている。待つことは苦にはならない。五日前、１０数年ぶりにこの空港にやって来て、コロナ禍故高野山行きの直行シャトルバスは運休していて、大回りして大阪天下茶屋経由で、高野山に登った。奥の院にて３年前に亡くなった妻を悼み、１か月前に亡くなった山の友を悼み、旅行直前に亡くなった隣家の鈴木さんを悼んだ。それから南紀に下り、熊野三山、那智の大滝を見、辺路も歩いた。紀伊の国は基の国。魂の宿る土地。歴代法皇が何回となくなってきた磁力、魔力のようなものがあるのだろう。そうだ、自分は何回もやって来ることは出来ないが、もう一度は来よう。会いたい人もいて、拝みたい場所もある。身体とお金がいつまで続くかどうかが、心配だが・・・。
（完）
関空連絡橋。まだ５時台だが、何故か暗い海だ。
９時５分発ＪＡＬ機。離陸までにはまだ３時間もある。
少しばかり腹ごなしをしておく。
