今朝の民放番組で2日前のJAL機衝突事故の後の機内から脱出までの8分間のビデオ映像が流された。搭乗客が自身のスマホビデオで機内の状況を撮影したものだ。これだけの大惨事で、よくぞ落ち着いてこれだけのカメラ回しができたものと、感心した。危機が直ぐ目の前まで迫っているのに、そんな危機感は微塵も感じさせず、殆ど平常心に近い撮影行動だった。機内もパニックにはならず、乗客は大声で叫ぶCAの指示に素直に従っていた。撮影開始から脱出までの8分間、火の手は窓の外に迫ってきていたが、見る方もパニックにはならず、殆ど安心して見ていられた。そこには、全員救出されたとの事前情報があり、悲惨な結果にはならない、との事前認識があったからだ。
このビデオ撮影者、乗客の大半も同様に思っていたのかも知れない。機は滑走路に停止している。後はスロープで地上に滑り降りるだけだ。機内には煙は入って来るが、炎に包まれた訳ではない。脱出が開始されれば、数分内に危機から逃れらることができるだろう。パニックになっていない冷静な頭では冷静な判断が出来たのかも知れない。ただ小さな子供達の叫び声、CAの悲鳴に近い伝達指令声は、やや緊張感を高めるものがあったが、それにしても撮影者はあくまで冷静だった。ナレーションにも緊張した声は録音されていない。
JAL機が着陸直後に海保機と衝突し、その後停止するまでには1分程度だったかと思う。その停止直後からビデオが始まったが、脱出ドアが開かれるまでに7分以上を要したのはどうしたことか・・。全員救出という美挙の中に、隠された不具合、欠陥はなかったのか・・。停止直後にどうしてドアが開かれなかったのか・・。もしのドアの開口が後数分遅れていたら、炎は機内に侵入し、乗客乗員全員の死亡も想定された。この点で言えば、正に危機一髪の救出劇だったのだ。
30数年前のJAL機御巣鷹山事故を思い出す。飛行中に尾翼隔壁が飛んで、飛行困難が生じ、機は上手くコントロールできない状態に陥った。それでも機長は羽田へ引き返すべく、困難な中でも操縦を続け、結果、御巣鷹山に墜落した。JAL機はコントロール不能で、空中を漂った結果、山に激突した訳ではなかったのだ。羽田に戻る意志があり、主翼の2枚でどうにかコントロールし、大阪方向行きを反転までさせて、羽田に向かったのだ、大きくずれて群馬山中に大楕円を描いた結果の事故だったのだ。この時、機長が駿河湾上空での尾翼隔壁喪失という異常事態に対し、すぐ目の前の自衛隊浜松空港とか中部空港、或いは最悪駿河湾、太平洋上への水上着陸を試みていれば、或いは死者合計500人という航空史上最悪の結果は回避できたのではないか。マスコミとか航空事故専門家、JALからはそうした観点からの厳しい指摘は無かった。
この時の事故では4人の乗客が助かった。そうした乗客からの聞き取りも行っているだろうが、航空事故専門委員からの事故を回避すべき方策の提言もなかったと思う。この時の機長を責める意図は自分には全く無い。JALの会社としての方針が、飛行中に何かトラブルが生じた際には、出発地、ここでは羽田に戻るようにとの、マニュアルが出来ていて、機長はそれに従ったに過ぎなかったのだろう。これだけの大事故に際しても、社内の規則は機長の自由判断を阻害していた。臨機応変での対応を出来なくしていたのであれば、それは硬直した制度、組織と言わざるを得ない。今回の羽田事故、その一歩寸前のタイミングで、危機を脱することが出来たのだが、それは正に不幸中の幸いであって、天佑の奇跡と思わざるを得ない。助かったら良かったじゃなくて、大惨事の一歩手前の危機を見逃すことのないよう、事故専門委員からのしっかりとした提言を待つ。
昨日のBS8,反町の報道番組に生出演した総理の精彩の無い顔、輝きが失われた総理については、次の機会のブログに述べる。