ちゃおチャオブログ

日々の連続

11.25(火・晴れ)神がかり。

 

 

日本語に神懸り、という言葉がある。神憑り、とも書くようだ。神が人に憑依し、予想外の力を発揮し、神助、神業のような幸運にも助けられる。今回の安青錦の優勝は大半が彼の実力によるものだろうが、目に見えない所での神の助けもあったに違いない。

 

今から5年前の1月場所、幕尻17枚目徳勝龍はあれよあれよと勝ち上がり、14勝1敗で優勝した。14日目、同じ13勝1敗、同星の正代を破って、翌千秋楽は結びの一番で大関貴景勝と対決、押しの貴景勝を見事に寄り切って幕尻優勝を果たした。

 

ここまでの徳勝龍は幕下と十両を上がったり下がったり、又、十両と幕内との間も行ったり来たりしていて、強い力士とのイメージはなかった。しかし、この1月場所、漸く幕尻に再入幕したが、今までとは全く違った勝ちっぷり。2日目に1敗して以降は連勝街道で、今までとは見違えるように光り輝いていた。仕切りにオーラがあった。彼は奈良高市郡高鳥町の出身で、小学校を橿原で学び、高市総理と同窓だ。

 

優勝後、彼は15枚も駆け上がって、前頭2枚目に昇ったが、これが彼の力士生活の最高位。しかしこの場所は大きく負け越し、段位を下げ、下位で更に負け越し、十両に落ち、その後も余り良いところなく、幕下まで落ち、更にその後も番付を下げ、最後は序の口に落ちる寸前、今から3年前、現役引退した。優勝経験者が序の口で相撲を取るなどは嘗てなかった。土俵を去るのは当然の帰結だ。この優勝した2020年1月場所は見事に光り輝き、神懸りの強さを発揮した。実際、彼の後ろには背後霊がくっ付いていたのかも知れない。

 

だが、その後、角界に奇跡が起こった。同じ年の7月場所、前頭17枚目の照ノ富士が再び幕尻優勝の快挙を遂げたのだ。彼は前年、大関まで上り詰め、優勝も複数回経験し、次期横綱とも目されていたが、怪我や病気に泣き、休場も重なって、番付初となる大関経験者が序二段まで番付を落とした。一時はモンゴルへ帰国することも考えたが、親方、伊勢ケ浜に諭され、努力を重ね、怪我も克服し、相撲番付下から2番目の序二段から這い上がり、この年の7月場所で3回目の幕内優勝を果たし、その後は大関横綱と活躍し、合計10回もの優勝を果たした。類まれな精神力の持ち主と言える。

ただそんな彼も、怪我には勝てず、横綱になっても休場が重なり、結局、今年の1月、現役を引退することになった。序二段から這い上がる際に、「番付を上げて行く楽しみを、もう一度楽しめる」とあくまで前向き、再十両に決まった時、最初になった時よりも、もっと嬉しかった、と話していた。相撲人生に前向きに取り組む照ノ富士を神は最後まで見捨てなかったのだろう。

 

この1年前の5月場所、元大関朝の山が前頭8番目で優勝、その後も精進を重ね、翌年の5月場所には富山勢初の大関に昇進した。大関在籍中も好成績を残し、次の横綱とも目されていたが、コロナ禍の夜遊び不祥事が発覚し、自身のケガも相まって番付を落とし、徳勝龍同様に、幕下まで番付を落とすことになった。ただ徳勝龍と違ったのは、彼自身努力する意志が強く、その後十両まで上り、今場所は十両上位で好成績を残したが、幕内に戻れるかどうかは微妙だ。彼ももう既に25歳。今の幕内には20歳、21歳の若手の次世代を担う力士が数多居て、彼はもう既に番外の人となっている。彼の神懸りは大関時代の横綱を目指した時点だったが、何故か神は離れて行った。

 

十両又はその下の幕下には、一時輝き、大関横綱とも期待された力士が、今も尚、黙々と土俵に上がっている。一時は期待もされた能登穴水出身の遠藤もそんな力士の一人だった。日大出身で、とんとん拍子で上がって来て、彼こそが横綱大関、役力士を独り占めしているモンゴル勢に風穴を開ける日本力士と応援していたが、中々小結から上に上がれず、怪我に泣き、十両に落ち、遂には9月、全休で幕下陥落が確実になった今場所、引退となった。

 

日曜日、男女ゴルフトーナメントが行われ、日本に帰って来た松山英樹、米国では長らく優勝から遠ざかっていて、日本での活躍が期待されたが、41歳の塚田が2度目の優勝をした。小さな子供二人を腕に抱え、ほぼ20年ぶりの優勝に笑顔を見せていた。松山はまだ彼よりは随分と若いが、応援のオーラは消えていた。

女子トーナメント、大王製紙、台湾出身の21歳ウー(呉)、ずっとトップを走り、特に最後の3H,バーディーを連続し、日本女子を寄せ付けない強さだった。神懸り。以前イギリスの全英オープンで優勝した渋野、日本女子初の圧倒的強さを見せていたが、その後のツアーでは冴えることなく、今回も又予選落ち。神様はどこかに雲隠れしたようだ。あの時が一瞬の輝きだったのだ。