ちゃおチャオブログ

日々の連続

9.18記念館。柳条湖事件に想う。

<後方が張作霖の豪華な館> 
 
\¤\᡼\¸ 7
 
 
中国瀋陽には二つの立派な建物がある。その内の一つは、張作霖・張学良の住んでいた広大な城塞のような館と9.18記念館である。5年前の冬の1日、この二カ所を同時に回った思い出がある。
 
張作霖と言ったら北方軍閥の親玉で、関東軍と結びつきその勢力を拡大したが、その後は邪魔になったのか、関東軍特務大佐河本大作仕組む陰謀により、乗っていた列車毎爆殺された。盧溝橋事件である。張学良はその息子だ。
 
これ等の事実は大方の日本人は知っているが、柳条湖事件について知る日本人は少ない。日本ではむしろ盧溝橋事件の方が大きく取り上げられている。この柳条湖事件は戦線不拡大の政府方針にも拘わらず、軍部が独走し、日華事変、それに続く満州国創設、日中戦争へと続く最初の事件であり、これも又関東軍の謀略により引き起こされたものである。
 
81年前のこの柳条湖事件について大半の日本人は知らないが、中国ではこの日を大々的に宣伝している。「屈辱の日」として。
 
日中戦争直後の国共内戦、その後の共産党国家の樹立、朝鮮戦争ベトナム戦争紅衛兵事変、等々打ち続く国内外の問題に、政府も人民にもこの柳条湖事件は長い間忘れ去られていたが、紅衛兵問題が落ち着き、4人組が追放され、社会が安定してくると共に、国の誇り、利害、国家の威信、等々が芽生えてきて、近代中国の屈辱的な内政、外交史の中で、この日が日本軍(関東軍)による国家蹂躙の始まりの日として位置付けられてきた。
 
この9月18日を屈辱の日と定め、反日感情を増大させることに大きな影響を与えた政治家は江沢民で、彼は当初鄧小平から引き揚げられた上海派で、親日と見られていたのだが、総書記・主席に収まると反動的な言動が強くなり、親日どころか反日的な言動で国民をそうした方向にリードして行った。日本にとっては困った政治家である。
 
さて、その柳条湖。大体どこにあるのか、殆どの日本人は知らないし、多分、多くの中国人も場所までは知らないだろう。ただ盲目的にこの日が「屈辱の日」と刷り込まれているに他ならず、場所とか状況とかは全く頓着せずに、ただこの日を境に国が日本軍に蹂躙され続けてきた、と教えられて来たに他ならない。
 
柳条湖は瀋陽、当時は奉天府と言って清王朝の故地でもあったのだが、ここに関東軍参謀本部が置かれ、一時は吉田茂なども奉天総領事として勤務した土地でもあるが、その瀋陽を南北に縦断する満州鉄道の北外れにある場所である。当時主席であった江沢民はこの線路の爆破現場の直ぐ横に記念館を作り、「9.18記念館」と命名した。この事件を永らく国民に知らしめる為である。
 
当時、瀋陽市内からタクシーを飛ばし、この記念館へ行ってみたが、「9.18」と言う直裁的な命名に何か嫌な予感もしたが、館内は正に反日の砦のような感があった。特にその薄暗い半地下の陳列室では時々鳴り響く列車の音響と共に爆発の効果音なども響き、当時の日本軍のおぞましさを掻き立てるものがあった。しかし、これ等の陳列物は、嘗ての、戦前の日本軍の行った行為を断罪しているのであって、現在の日本を批難しているものではない、と自身で得心し、早々に館を出たのであった。
 
当方には、江沢民がどの様な思いで再び柳条湖事件を国民の前に晒し、情宣しているのか、その結果、中国国民の多くはこの日を「屈辱の日」と認識し、記憶するようになったのか、その意図も背景も分からない。
主席時代の江沢民は反動ではあっても反日とは思っていなかったが、ある日、何かのきっかけで、国民の目をこの方面に向けさせる何等かの動機があったのかも知れない。類まれな政治家の一人とみている当方に取っては、江沢民のこの様な変節は残念に他ならない。
 
ただ更に言えることは、柳条湖事件は戦前の日本軍・関東軍が国民の意思、感情とは関係なく暴走した結果であり、日中戦争時代に行われた軍の残虐行為は、戦争下におけるどこの国の軍隊でも行われたかも知れない行為、と言っても免罪符にはならないが、そうした過去の過ち一切を清算し、戦後の平和日本がスターとしたもので、それは先の天皇陛下訪中の際にも述べられたことである。
 
中国人が憎む以上に我々日本人は戦前の行き過ぎた軍国主義を憎み、現実に、国土、国民が大きな犠牲を受け、そうした教訓から現在の平和日本があるのであって、中国国民が「9.18」を「屈辱の日」として忘れないのも、過去の過ちに対して向けられるものであり、決して、今の日本人が同じ線上にあるものではない、と強く主張したい。
 
日中韓は一衣帯水の友好国。この関係が崩れたら、お互いが不幸になるだけである。
 
 
 
 <9.18記念館>
\¤\᡼\¸ 13
 
 
 
瀋陽(旧奉天府)にある清王朝初代ヌルハチ墓所・昭陵
\¤\᡼\¸ 11