蓮の花を持つ、麗しい像だ。
さて、本堂に上がり、ご本尊の聖観音にお参りする。
坂東に三十三ケ寺ある観音霊場で、この寺光明寺は七番目の札所になっている。三十三ケ寺の霊場が制定されたのはかなり古く、鎌倉時代に遡る。坂東とは字のごとしで、坂の東、則ち、御殿場、箱根の坂の東にある観音寺ということになる。日本一長い川、利根川を坂東太郎と呼びならわしているのも、同じ意味である。鎌倉の第一番杉本寺から始まって、関東一円の寺を回ることになるが、その距離は約1300キロ、四国八十八ケ寺とほぼ同じくらいの距離になる。この三十三ケ寺は四国の八十八ケ寺を見倣って制定されたものではなく、西国三十三ケ寺観音霊場を見倣って、東国にも制定されたものである。
この寺の由緒も古く、先刻の長谷寺や杉本寺と同じころの創建になる。ご本尊は聖観音で、三十三ケ寺の中では、十一面観音菩薩をご本尊としている寺が圧倒的に多いが、この聖観音をご本尊とする寺は6ケ寺ある。聖観音は多数ある観音像の中で、大本の観音、正観音とも言われ、上記の十一面観音や千手観音、千手千眼観音などは、この聖観音から派生したものと言われている。その聖観音の銅像が本堂の前に立っている。先達さんから一しきり上記の説明があった。
聖観音は麗しい。確か奈良薬師寺の聖観音は国宝に指定されているが、数年前奈良に行った際、西大寺、唐招提寺と薬師寺を訪問したが、その時、聖観音像に妻の病気回復を願った。それ以前に行った時には東塔は無かったが、その時は立派な五重塔が建っていた。聖観音を見ると、何故かいつも奈良薬師寺を思い出す。前庭の聖観音銅像にお参りし、皆、これから本堂へ昇段し、ご本尊の木造聖観音にお参りする。
本堂の脇には、もう早咲きの桜がほころんでいた。
この桜の根元には水琴窟が埋めこまれている。
この左側に水琴窟がある。鈴のような音が地中から響いて来た。奥は庫裏。