猪瀬都知事が今日退任した。1年と数日。最短の在任期間だった。思えば丁度1年前、430万票という史上最高の得票数で知事に就任した猪瀬氏だったが、副知事、知事を経るに従い権力の座に溺れ、是非善悪の区別すらもつかなくなり、5000万円と言う途方もないお金が裏金なのか、賄賂なのか、成功報酬なのか、初対面の医療法人フィクサーから渡され、濡れての粟で掴んだは良いが、天網恢恢疎にして漏らさずの譬え通り、全くひょんなところ、彼にとったら全く意想外の所から露見することになり、1年前の都民の熱狂は、今や最大の憎悪となり、石もて追われる身になり、本日退任した。
それでも裏からこそこそ逃げ去るのではなく、60余名の都庁職員が見送ってくれた、というだけでも彼にとっては有難い話で、感謝に耐えないことだろう。
そうして手にする退職金1千数百万円。1年ちょっとで1千数百万と言うのも、随分法外な金額だが、それが都知事の職務規定に合致しているものなら、過去の知事が得てきたように彼にも権利があると言う主張もできる。
しかしそれは通常退職の場合の規定であって、今回の猪瀬知事には当てはまらない。後ろめたいお金を陰で受領し、それが露見した後の都政の混乱、その後の任期半ば、までも行かない就任1年目での退任は、都民が求めた4年任期からすれば重大な服務規程違反であり、尚且つ本件5000万円の授受が刑事問題に発展するかも知れない可能性を秘めているのであれば、都とすれば安易に規定を当てはめて退職金を支給すべきではなく、それら刑事問題が落着するのを待って判断すべきであるし、よしんばそれが出来ないとすれば、一定の金融機関に供託しておくべきだ。
仮に本来行われるべきそうしたプロセスを無視し、退職金が支払われたとすれば、次の問題は猪瀬氏に帰納する。即ち、彼自身が430万人投票都民に謝罪する気持ちがあり、都民から指弾されて辞職せざるを得なくなった責任、再び50数億円の費用をかけての都知事選、オリンピック東京招致に関わる諸外国・国際社会へのDefame、不名誉、日本国全体の評価・信用の毀損、Devalue等々を鑑みれば、安易に受領すべきではない。
猪瀬氏は元々は理性的な人間である。当方も三島由紀夫論、ペルソナ以来の作家猪瀬のフアンではある。従って、彼がもしも退職金1000数百万を受領したならば、都への返却は行政上無理としても、日赤なりその他の福祉機関への全額寄付、義捐すべきであるし、そうすることによって、彼の贖罪としてはこれだけでは不十分かも知れないが、投票都民の一定の理解は得られるだろう。当方は、都知事を辞め、再び普通の人間に戻った彼なら、理性を取り戻し、そうすることを信じている。