いよいよ明後日の金曜日、東京五輪の開催式が行われるが、それは無観客の競技場に陛下の開会宣言が虚しく響くだけだ。各国から要人を迎えるとは言え、米国からは大統領本人ではなく、婦人。唯一フランスから次期大会主催者としてマクロン大統領が参加するだけで、冬の北京五輪中国からは、誰が参加するのかもまだ明らかになっていない。メディアは大会を盛り上げる為に、色々な演出をするだろうが、この程度の要人参加では枯れ木の賑わいにもならない。無観客に宣言するのなら、陛下も何もわざわざ会場に足を運ぶこともなく、今はやりのリモート宣言で、巨大スクリーンに映し出された皇居から、御所を映像に入れて送ったほうが、より演出効果は高まるだろう。
今回の東京五輪、一言で言えば「呪われた大会」だ。そもそものスタートは、名誉欲に駆られた石原慎太郎が、二度目の東京大会に執着したものだったが、それが慎太郎以上に目立ちたがり屋の安倍晋三に引き継がれ、IOC委員への多額の裏金をばら撒き、金で票を集めた結果、東京に決まったのだが、彼が痛く名誉欲をくすぐられたのは、前回リオ大会で、マリオの扮装をして会場に現れたことであり、児戯のごとき彼の振る舞いで、欲望のほぼ半分ほどは満たされたに違いない。
その後の東京大会は坂道を転がり落ちるように、問題が続出し、最初の躓きは、元IOC竹田会長が、2億円の買収資金ばら撒きの容疑でフランス検察の捜査を受けたことであり、次に問題になったのは、誰が決めたのか、「建たない建築家」で有名なイラク人女性建築家ザハ・ハデドで、結局契約は解約せざるを得なくなり、この違約金に組織委は一体幾ら支払ったのか! 組織委は具体的な金額を公表していないが、数十億円では足りない莫大な罰金を払ったのだ。
更に続いたのは偽エンブレム事件、五輪のシンボルマークとも言うべき重要な紋章が盗作されたことであり、全く以って恥ずべき行為だった。日本人の恥を世界に晒すことになった。更に恥の上塗りは、ポンコツ老人、森喜朗の女性蔑視発言で、旧態依然の老人性痴呆症の男が未だなおドンとして君臨し、日本の近代スポーツ界を牛耳っていることであり、世界の識者は唖然としただろう。
そこへ来て今回の大会オープニングマーチ、作曲をした小山田某が、学生時代身障者の同級生を陰湿な虐め、暴力行為を繰り返していたことであり、それが表面化して、世間の風当たりが強まり、遂には昨日自ら降りざるを得ない状況に追い込まれた。今まで一体組織委は何をしていたか? 数々の不祥事にズタズタに名誉を傷つけられた日本国家、乃至全体像としての日本人。こうした不祥事が発生し、世界に赤っ恥を出さないように、事前の且つ細心の注意をして、大会を成功裏に導くのが役割であるが、内閣も都もIOCも当事者能力を喪失し、場当たりの出たとこ勝負、モグラたたきのような有様で、全く体を成していない。それもこれも理念なき大会招致が発端であり、一部政治家の自己中心的な名誉欲に駆られた結果であり、崇高なスポーツ神、アポロ乃至ヘラクレスの罰を受けているような感もある。
悪意で巻かれた結果の悪果は自ら刈り取らねばならない。バッハが恰も家畜獣ヤプーを見るがごとき眼差しで、日本人を表していたが、この五輪の災禍は日本人自らが招いた結果であり、日本人に帰趨するものである。この先、関係者から更なる不祥事、招待選手からの感染者増大、強いては大会中止に至らないことを願う次第だが、当初予算7340億円の経費が既に1兆6500億円に増大していて、この先、どこまで増大するのかは不明だ。当初目論んだ経済効果32兆円は、既にマイナス効果になっている。願わくば五輪終了後のギリシャの二の舞にならないことを願う次第だが、今の自己中心で無責任な政府、大会関係者を見ていると、果たして全く予断が出来ない状況に、多少の寒気すら覚える。呪いはこれを最後にしてもらいたい。