毎日忌まわしいニュースと映像が飛び込んでくるウクライナ戦争。いつ終止する目途もなく、今日で1年が経った。既にウクライナ兵士市民の10万人以上が死傷し、推定ではその倍を超えるロシア兵が死傷した。死者数では4万―6万人とも推定されている。77年前、第2次世界大戦が終わって以降の最大の死傷者で、朝鮮戦争、ベトナム戦争を越えている。今回の侵略は歴史に刻まれ、ロシアはこの先何世紀にも渡って、悪辣非道な鬼畜の国、国民と疎まれる。
昨日のモスクワ競技場に集まった20万人の聴衆を前に、プーチンは威勢のよいことを言っているが、プロパガンダだ。嘘っぱちだ。一昨日レニングラードでの戦勝記念日での1時間半のバカげたスピーチも同じだ。負け戦を糊塗するだけの長広舌に過ぎない。言っていることは真実の裏側の虚構で、軍人、軍属、知識人は皆分かってはいるが、独裁国家ではそれを口にできない。ちょっとでも口を滑らせたら刑務所行だ。面従腹背を絵に描いたような昨日の大集会と記念日演説だった。
一方のウクライナ、10万人の死傷者、内死者は2万人を越えていても、国は一つに纏まり、戦意喪失は全く無い。ゼレンスキー大統領の下、失地回復、レコンキスタの意欲に燃えている。勝敗の帰趨は明らかだ。プーチンの思想的参謀役がこの戦争は大祖国戦争で、ロシアと西側との戦い、ロシアが戦争に負けることは無い。負ける時は核の使用によるロシアと世界の終末だ、とまで息巻いている。が、それは強がりに過ぎない。戦いの行きつく先、勝利はウクライナにある。
この先の戦争がどうなるかは誰にも分からない。核使用なしでロシアが負けるか、周囲の反対を押し切ってでも部分的核使用に押し切るか、或いは狂気の指導者による全面的な核戦争になって、地球が破壊されるか・・。鬼畜プーチンや思想家トレーニンなら、地球人を人質に取ってでも、或いはそうするかも知れない。地球人の一人としてはそうならないことを願うが、先は分からない。狂気の気違いは誰も制御はできない。多くの希望的観測は部分的にもせよ核の使用無しに、戦争が終わることだ。今以上の悲劇は作ってはならないと。
ロシアは戦線に於いても、背後の国内生産、経済活動に於いても、敗戦に向かっている。対前年マイナス2%のGDP下落は偽りの数字だ。内実はその数倍はあるだろう。ルーブルは確かに戦争以前のレートをキープしているが、それは政府が買い支えているに過ぎず、その資金も既に枯渇しつつある。モスクワ市場のレート、RTSは900ラインに下がっていて、900を割り込むのは時間の問題だ。一時は3000を越えていたRTSレートも今は三分の一になっている。ルーブル株を持っている人は皆貧乏になった。いまや、経済も軍備も軍事も、この先いつまで続くかが問題だ。
一方のウクライナ。ゼレンスキー大統領を中心に一つに纏まり、鬼畜プーチンと戦っている。この国、ウクライナを絶対にロシアに渡してはならないと。二度と再び、ロシアの属国になってはならないと。8年前、ロシアに占領されたクリミヤの惨状は国民は皆知っている。根からのウクライナ人、大統領のようなユダヤ系、コサック人、タタール人、クルド人、ロマ人、ロシア系、等々、この国に住む多民族は今は一つに纏まってウクライナ国人として国を守っている。皆同じウクライナ人だ。ニュースでは余り報じられていないが、世界中からも自由を守る義勇兵が集まって来ていて、その中には日本人もいる。ウクライナの強さはここにある。
喜劇役者として、映画の中で大統領役を演じ、それがそのまま本当の大統領になり、プーチンも周りも誰も、端役程度にしか考えていなかった男が、今は国を引っ張り、自由主義社会の守護神として、最前線で戦っている。自由社会はこの御旗の元に集結し、最大限のバックアップをしている。負けさせられない戦いと。今ベルリンで国際映画祭が開催されていて、アカデミー受賞の俳優ショーン・ペンが監督としてウクライナ侵略戦争のドクメンタリー「スーパーパワー」が上映されている。この中にゼレンスキーも現職の大統領として出演している。或いはゼレンスキー、ドキュメンタリー部門助演賞の金熊を貰うかも知れない。
今日の開戦日に際し、岸田総理はG7議長国として何かを話していた。主に金銭的な援助と、自身がキーウに招待されているとのこと。総理がキーウまで飛んで行くかどうかは自分には分からない。だが、行けなかったとすれば、特別機をポーランドまで飛ばし、G7広島会議に招待すべきだ。自由主義社会の大きなシンボルになる。G7開催国としては、お金だけでなく、それ位のことはやってもらいたい。自由世界は全体で連帯し、この国の自由を守ると。悪と善との戦いだ。